サブカル雑記(仮)

アイマス、ファンタジー、ドール、プラモデル、ビール、アニメなど。

ファンタジー雑記 -19世紀のイギリスにおける妖精物語

 第28話「また会ったときに恥ずかしいからね」をもって「葬送のフリーレン」の放映が終わった。「葬送のフリーレン」は、2023年10月から冬アニメとして始まったマンガ原作のファンタジー作品だ。ファンタジー作品が好きな自分にとって、傑作が生まれた瞬間に立ち会えたことがすごく幸せだった。「葬送のフリーレン」は間違いなくファンタジーアニメの歴史に残る傑作であり、これをきっかけにファンタジー作品に興味を持つ人もいるはずだ。せっかくのチャンスなので、ファンの裾野開拓に少しでも貢献すべく、ファンタジー作品が楽しめるような歴史的背景をまとめることにした。

 日本でファンタジー作品が広く楽しまれるようになったのは、1987年に発売された『ドラゴンクエストⅡ』と『ファイナルファンタジー』がきっかけといって間違いない。では、それ以前はどうだったのか?そのきっかけはどのように作られていったのか?年代を追って説明していく。

 日本のファンタジー作品は間違いなく海外から輸入されてきた作品に影響を受けている。では、海外のファンタジー作品の基礎はどこにあるのか?その答えは1800年代(19世紀)のイギリスにおける妖精物語(Fairy Tale、フェアリーテール)にある。

 妖精物語とは、当時、貴族の子弟に使用人が聞かせた民話や伝承などの物語である。貴族の子弟を世話する使用人たちは、その多くがアイルランドスコットランドから移住してきたケルト神話の影響を受けた人達だった。妖精がいきいきと活躍する妖精の住み家としての物語が子供部屋で語られていた。

 やがて、子供たちへの教育が重要視されるようになるにつれ、貴族の子弟に下賎な使用人の物語を吹き込む訳にはいかなくなり、子供たちを使用人の害悪から守るための正統な物語として、子供向け文学である児童文学の市場が確立していく。

 そして、海外からも多くの児童文学が輸入された。その代表作が、グリム兄弟の『グリム童話』であり、アンデルセンの『アンデルセン童話』である。『グリム童話』とは、グリム兄弟が収集したドイツの民話を児童文学へと再構築した童話集である。1812年に発行され、1823年にイギリスに上陸した。『アンデルセン童話』とは、デンマークアンデルセンが、グリム童話の豊かな物語性に影響を受けて創作した童話集である。1835年に発行され、1846年にイギリスに上陸した。

 このように、輸入されてきた児童文学の影響を受けながら、イギリスでは妖精物語への興味や関心が高まっていく。そんな中から誕生した著名な作家をピックアップする。

(1)ジョン・ラスキン:1819-1900

 ・イングランド出身。

 ・イギリスにおける創作妖精物語の最初の作品の作者。

 <代表作>

 『黄金の川の王さま』1850

 

(2)ジョージ・マクドナルド:1824-1905

 ・スコットランド出身。

 ・現代ファンタジーの父とよばれる。

 ・イギリスで初めて大人向けのファンタジー作品を書いた作家。

 <代表作>

 『ファンタステス』1858年

 『リリス』1895年

 

(3)ルイス・キャロル:1832-1898

 ・イングランド出身。

 ・「少女」という概念と妖精物語との関係性にこだわった作家。

 ・妖精物語という形式、かつ児童文学という体裁のファンタジー作品。

 <代表作>

 『不思議の国のアリス』1865年

 『鏡の国のアリス』1872年

 

(4)ウィリアム・モリス:1834-1896

 ・イングランド出身。

 ・趣味人としての異世界構築趣味が有名(現在でいう同人活動の先駆け)。

 ・アーツ・アンド・クラフツ運動の主導者でモダンデザインの父とよばれる。

 <代表作>

 『世界のかなたの森』1892年

 

 

【参考文献】

・新編 別世界通信、荒俣宏イースト・プレス、2002年。

・ファンタジーの冒険、小谷真理ちくま新書、1998年。

ケルト歴史地図、ジョン・ヘイウッド著/井村君江監訳、東京書籍、2003年。

・ファンタジー文学入門、ブライアン・アトベリー著/谷本誠剛+菱田信彦共訳、大修館書店、1999年。